最低賃金5年で2倍、年13%上げを通知(中国)

 中国政府は8日、2015年までの5カ年計画で、最低賃金を毎年13%以上

引き上げる方針を打ち出した。最低賃金が5年間で2倍近くに上昇する計算

となる。賃金引き上げにより製造業の固定費負担は増加するが、購買力の

向上で販売拡大を進める動きが加速する可能性もある。

 中国の人事社会保障省や国家発展改革委員会などは8日、15年までの

「就業促進計画」を策定し、地方政府に通知した。10年までの前5カ年計画

で最低賃金は年平均12・5%上昇した。15年までの計画では上昇幅を拡大し、

各地で起きているストライキなど賃上げを求める動きに配慮した。

 中国は地方で経済発展状況が異なるため、最低賃金に格差がある。

広東省深〓市の最低賃金は月1500元(約1万8000円)と高い一方、

内陸部の江西省は610~870元にとどまる。就業促進計画では、それぞれの

地方で年13%以上の賃金上昇を義務付ける。 中国の賃金上昇について、

上海市と江西省に工場を持つ日系電子部品メーカー幹部は「過去5年間で

人件費は2倍程度上昇した。日本向け部品の価格は引き上げが難しいため、

さらにコストが上昇すれば、東南アジアへの工場移転を考えなければいけない」

と懸念する。 中国では労働者不足が深刻化しているため、同メーカー幹部は

「旧正月明けに上海で従業員募集をしたところ、計画の半分しか集まらなかっ

た」と指摘。「江西省では沿海部に出稼ぎに行っていた労働者が地元で職を

探しているため、従業員を確保しやすいが、給料は最低賃金の2倍を支払って

いる」と漏らす。 一方、中国でスーパーを展開する仏カルフールの中国法人

幹部は「消費者の購買力が向上するため、中国事業の拡大に追い風となる」

と分析。百貨店大手の王府井百貨集団(北京市)も「内需拡大に合わせ、

店舗網の拡大を進める」(幹部)との方針を示した。今回の就業促進計画では、

企業と従業員の労働契約を結ぶ比率を10年末の65%から15年末に90%へ

引き上げることや、15年までに都市での新規雇用を4500万人増やして都市

での失業率を5%以内に抑える目標も掲げた

日本経済新聞