ライフネット生命保険の躍進
店舗や営業担当者を抱えず、生命保険商品をインターネットで販売する
「ネット生保」が好調だ。大手生保の半分程度の保険料や商品設計の
分かりやすさが受け入れられ、20~30代を中心に契約数を伸ばしている。
生保業界での契約シェアはまだわずかだが、新規参入が増えつつあり、
市場での存在感は高まっている。3月15日に東証マザーズに上場し、
ネット専業生保として初の株式公開を果たしたライフネット生命保険は、
3月末時点の保有契約件数が11万8千件になり、前年同期と比べてほぼ
倍増。4月16日には12万件を突破した。急成長の理由は、保険料の安さ
にある。30歳男性で保険金3千万円(保険期間10年)の定期死亡保険の
月払い保険料を3484円と、大手生保の半分程度に抑えた。インターネット
に販路をほぼ絞ることで、人件費や固定費を大幅にカットした。
商品は10年、20年、30年など一定期間をカバーして、死亡保険金や医療保険金
が支払われる掛け捨て型の定期保険が主力だ。複雑な特約はなく、シンプルで
分かりやすいのも特徴で「最低限の保障でいい」という若年層のニーズをつかんだ。
契約者の約8割は20~30代で、まさに「狙い通り」(同社)だ。仏大手アクサグループ
傘下のネクスティア生命保険も同様のビジネスモデルを展開。平成20年4月の開業
以来、契約者を順調に伸ばしている。新規参入の動きも相次ぐ。23年5月に
オリックス生命保険がネット専用商品を発売。同年9月にはアイリオ生命保険が
提携する楽天と共同でネット向けの医療保険を売り出した。金融サービス事業の
SBIホールディングスもネット生保への参入を準備している。大手生保による従来
の販売手法は、営業職員が顧客の職場や自宅に足を運ぶ訪問型が中心。だが、
企業の情報管理やマンションのセキュリティー強化などを背景に、顧客と直接会う
のが困難になっていることも、ネット生保に若年層が流れる要因だ。
業界最大手の日本生命保険を飛び出し、ライフネット生命を立ち上げた同社の
出口治明社長は、「壁は厚いが、戦後からずっと続いてきた対面販売という
『社会常識』を崩したい」と強調。「(ネット生保で)10%程度のシェアは獲得
できるはずだ」と意気込む。ネット生保専業2社の保有契約件数のシェアは
全体の0・1%程度にすぎないが、急伸が続けば、大手生保も対面重視の
営業戦略の見直しを迫られかねない。
産経新聞
2012年5月10日 9:33 AM | カテゴリー:社労士