シニア社員にキャリア研修
50代以上のシニア社員の働き方を労使で考えるキャリア研修制度を取り入れる
企業が増えている。デンソーやオリックスは50歳時点で全社員が研修を受ける
制度を導入した。年金支給開始年齢が段階的に上がり、労働力人口が減少する
なか、今後役職を持たないシニア社員の急増が予想される。働き方の多様化に
向けて企業も社員も手探りで動き出した。 デンソーは昨年4月に導入した課長
級以上の50歳社員を対象にしたキャリア研修を、6月から係長級以下の全社員
に広げる。本社などで複数回に分けて開く。これまでも定年後の生活設計を考え
る研修制度はあったが、50歳の節目に今後の働き方やキャリアを考える機会を
設ける狙い。 研修では社員の平均年齢が上がり、シニア社員の就業環境が
多様化している現状を説明する。これまでのキャリアを振り返って自分の強みや
価値観などを見つめ直し、社員と会社が一緒に今後の働き方について行動計画
を立てる。 オリックスは2011年夏から50歳の全社員約120人を対象に1泊2日
でのキャリア研修を始めた。役職に就かない社員の増加を見込み、若手の時とは
違った働き方や会社への貢献の仕方を考える契機にしてもらう。 「社員構成は
ピラミッド型から10年後にはドラム缶型になる。中高年齢層には、今までのような
報酬や配置、昇格ができなくなる」と人事部の長谷川岳雄人材開発チーム長は
狙いを話す。 三菱商事は65歳まで働くことを見据え、どんなキャリアを積むか
を考える50代向けの研修を06年から続けてきた。任意の制度だが、「同世代と
情報交換できて有意義」などの感想が多く、対象者の大半にあたる毎年60~
80人が受講している。 雇用の延長に関しては今国会に高年齢者雇用安定法
改正案が提出されている。同法案が成立すれば、経過措置はあるものの、企業
は13年度から希望者全員を継続雇用する必要がある。 企業のコスト負担増に
なることから、同法案には経団連など経済界が強く反対している。ただ、労働力
人口の減少などを受けて、シニア社員の活用が必要になってくるとの見方では
労使ともに一致している。 厚生労働省の調査によると、11年の60歳以上の
常用労働者(従業員数51人以上の企業)は約230万人で、05年に比べて
約125万人増えた。役職ポストが限られるなか、60歳以降の雇用が広がることで
処遇は多様化せざるを得ない。長年の経験や技術、人脈などを生かすことが
企業の成長や活力にもつながるため、各社は研修制度などの取り組みを強める。
日本経済新聞
2012年5月21日 9:11 PM | カテゴリー:社労士