「パワハラ」のレッテル[東京 社会保険労務士]

かつては職場に厳しさで恐れられる管理職がいたものだ。理不尽な命令や嫌がらせは論外だが、

仕事の厳しい指導は若手の成長を促す面もある。だが最近は「厳しさ=パワーハラスメント」ととらえる

風潮が広まる。指導なのかパワハラなのか。判断に迷い、しかりにくい状況が生まれている。

「おまえ、パワハラしたらしいな」。同期の言葉に40代のAさんは耳を疑った。身に覚えがない。

営業部門で課長を務める。うわさの出どころが部下の若手と分かり、ようやく状況がつかめた。

1カ月ほど前、その部下が「夏休みを6月末に1週間ほど取りたい」と言ってきた。例年6月は

多忙期。「少し後ろにずらせないか」。「もう予定を立てたので」。やりとりを続けるうちに「職場の状況も

考えろ」とつい語気を強めた。この一件がきっかけとなり、業績アップのため休みも取らせないパワハラ

上司のレッテルを貼られたらしい。 課長に昇格したときに部下に嫌われるのを恐れるなと先輩に

助言された。その心得は忘れていないが、パワハラと言われ腰が引けた。「感情的になったのは

認めるが怒鳴ったわけでもない。部下の指導がやりにくい」と戸惑う。 パワーハラスメントという言葉が

周知され、暴力や罵声を浴びせる悪質な行為は職場で問題視されるようになった。半面、訴える側の

過剰反応も出てきた。 「企画提案をいつも言下に否定される」「失敗を同僚の前で指摘された」。

企業の相談窓口にパワハラと社員が訴えた実例だ。いずれもその内容だけでは認定しづらい。

人事研修会社クオレ・シー・キューブ(東京・新宿)は2010年に職場のパワハラの実態を調査した

(有効回答163社)。すると53・4%の企業が「訴えがあったが、パワハラと判断できないケースが

あった」と回答した。同社の岡田康子社長は「業務上必要ならば厳しくしかっても構わない。でも

パワハラだと訴えられるのが怖くて部下への指導をためらう管理職が出てきた」と指摘する。

混乱の一因はパワハラの定義が明確でないこと。訴訟で個別に認定されたケースはあるが、

どんな行為がパワハラかを明示する法律はない。厚生労働省の研究会が目安となる類型を

今年まとめたが、あいまいさは残る。 大成建設は4月、就業規則にパワハラ禁止を盛り込んだ。

ただ、そこで明記したのは暴力や人格を否定する発言など明らかな違反な行為だ。人材いきいき

推進室長の塩入徹弥さんは「現場では安全のため、とっさに怒鳴ることもある。それもパワハラなのか」

と話す。社員育成のためにしっかりした指導も欠かせない。「同じ行為でも上司と部下の関係の

良しあしで、許されるときと許されないときがある。個別に判断せざるを得ない」と打ち明ける。

オリックスは08年に独自にパワハラ基準をつくり、徹底している。特徴は1回でも許されないレッド行為と、

繰り返してはいけないイエロー行為に分けていること。暴力はレッドだが、部下の問題行動に感情が

高ぶり「コラッ、ばかやろう」と怒鳴るのはイエローだ。「言い過ぎた」とその後に伝え、くり返さなければ

パワハラとは断定しない。 「辞めてしまえ」「給料分は働け」。昔は上司に怒鳴られて成長した、

と嘆く年配社員もいる。かつては終身雇用と年功序列が保障され、昇進昇給など明るい夢を見られた

ので厳しい指導に耐えられた。でも今の企業は違う。指導の仕方も変えざるを得ない。

クオレ・シー・キューブの岡田社長は「ただ若い世代もストレス耐性が低くなり、過剰反応する傾向が

ある」と指摘する。指示や指導が納得できなかったり厳しすぎると感じたりしたら、上司に直接真意を

確認すればよいのに、それを避け、人事部など第三者に解決を委ねようとする。岡田さんは「働きや

すい環境をつくるには上司と部下相互の歩み寄りが大切」と強調する。(編集委員 石塚由紀夫)

パワハラの相談16%増 パワハラの訴えは軽視できない。厚生労働省によると、各地の労働局

などに寄せられた2011年度の労働相談のうち、パワハラなど職場のいじめ・嫌がらせに関するものは

4万6千件と前年度比16%増加した。勤務先に労働局長が助言・指導したり紛争調整委員会が

あっせんしたりしたケースも2600件と、同27%増だ。 企業のメンタルヘルス事業を手掛ける

ピースマインド・イープ(東京・中央)の荻原国啓社長は「経営状況が厳しくなり、結果が出ない社員

や非正規社員が標的になっている」とみる。 だれもが加害者になるリスクはある。防ぐには

(1)しかるときも、良い点を褒めることを忘れない(2)「やってしまった」と思ったら、その後の対処を

怠らない(3)日ごろの意思疎通を欠かさず信頼関係を築いておく――などが大切だと荻原さんは助言する。

日本経済新聞

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