病院・介護現場のニーズ底堅く、看護学部、新設続く[東京 社会保険労務士]

 看護系学部を持つ大学が右肩上がりで増え続けている。1992年に国が看護系大学の整備指針を

出して20年、学校数は約20倍、入学定員も約30倍に。少子化もどこ吹く風、今後も新設が相次ぐ

見通しだ。病院や介護現場などのニーズは高く、民間企業への就職難もあって志願者も増加している。

専門家からは競争激化に伴う質の低下を懸念する声も上がっている。

 「実習先はどんなところですか」「他学部の学生との交流は」。7月中旬、看護医療系予備校の

新宿セミナー(東京都新宿区)が開いた進学ガイダンス。大学や専門学校など60校がズラリと机を

並べた会場には、平日にもかかわらず大勢の高校生が集まった。

 母親と一緒に来た女子生徒に交じって男子生徒の姿も目立つ。有名大のブースには長い行列も。

首都圏の私大看護学部を目指す東京都北区の高校3年女子(18)は「看護師はあこがれの仕事。

実習内容や付属病院の様子、就職先を見て志望校を決めたい」と複数校のブースを回った。

 大田区の高3女子(17)も「就職難なので仕事に直結する看護学部は魅力がある。保育士の

資格も取れる4年制大学に行きたい」。一緒に来ていた母親(52)は「専門知識だけでなく、

幅広く勉強できるので、総合大学にある看護学部に進学してほしい」と話す。

来年度は計8校

 かつて専門学校や短大の独壇場だった看護師養成に4年制大学が相次いで参入したことが

増勢に拍車をかけている。

 文部科学省によると、看護師養成課程のある学部・学科を持つ4年制大学(看護系大学)は

91年度の11校から2012年度の203校と増加した。入学定員も91年度の558人から1万6876人に。

看護師国家試験の合格者のうち、4年制大学出身者が2割超を占めるまでになった。

 13年度以降の新規参入を目指す大学も多い。来春に定員80人の看護学部の開設を申請中の

関東学院大(横浜市金沢区)は全国からベテラン教員を集める。約20年間看護学を教えた神戸大

から今春赴任してきた矢田真美子教授は「ゼロからのスタートだが、社会的ニーズは大きい。

総合大の強みをいかしてアピールしたい」と力を込める。

 同校を含め、13年度も計8校が看護系学部の新設を予定しており、文科省の担当者は「今も

学部新設に関する電話相談は後を絶たない」という。

 看護師不足を受けて92年、看護師等人材確保促進法が施行された。同法の基本指針で国は

「資質の高い看護師を大学で養成することが社会的に要請されている」と看護系大学の充実を求めた。

06年の診療報酬改定で看護師を手厚く配置した病院の報酬が上がる仕組みに変わったことも、

ニーズをより高める結果となった。

定員割れ少なく

 高校生の人気も高い。予備校大手の河合塾によると、全国の私立大の看護系学部・学科の

志願者数は00年の約1万4千人から12年には約6万2千人(いずれも延べ数)になった。同期間の

私大全体への志願者数が1・1倍程度の増加にとどまったことと比べ、大幅に伸びている。

 同社の担当者は「特にリーマン・ショック後の09年以降、志願者が急増している。ほぼ確実に就職が

見込め、地元で仕事が見つかりやすいことが人気につながっているのでは」と分析している。

 少子化に伴う定員割れに直面する大学にとっても人気の高い看護学部の存在は大きい。

新宿セミナーの畑中真一副本部長は「今のところ大きく定員割れをした看護学部はなく確実に入学が

見込める。有名私大でも看護学部新設の動きがあるようだ」と話している。

 女性の就業者が大半を占め、夜勤などもある看護師は休職や離職が多く、常に高い需要がある。

厚生労働省の「需給見通し」によると、看護職員の需要は2011年の約140万4千人から、

15年には約150万1千人に増加する見込み。病院で約6万6千人の需要があるなど、新設が

相次ぐ看護学部の卒業生の足元での吸収力は依然大きい。

 一方、看護師養成が進んだ結果、供給も11年の約134万8千人から15年は約148万6千人と

なる見通し。需給見通しは15年には約99%になるとみられ「中期的には看護師の需要はかなりの

程度満たされる」(同省)との見方もある。

 教育の質を懸念する声もある。東京都練馬区の看護師の女性(45)は「看護師養成には実習先や

提携病院での教育も大切だが、新設校は十分に確保できているのか」と不安視する。ある

公立大看護学部の担当者も「学部が増える一方、教員は不足している。いい人材は取り合いだ」と話す。

看護師国家試験の合格率が全国平均をかなり下回る学校も出始めている。

 大学経営に詳しい広島大高等教育研究開発センターの丸山文裕教授は「看護学部は設置コストが

安く、参入がしやすい。だが、これだけ新規開設が続けば、供給過剰になって確実な就職が

難しくなる時が来る。大学には長期的な視野が欠かせない」と指摘している。

日本経済新聞

東京都中央区の社会保険労務士
HK社会保険労務士事務所 [東京 社会保険労務士]
労働問題・助成金・就業規則に強い専門家
ご相談は初回無料!!

<お問い合せ・ご相談はこちら>

http://www.hksr-office.com/contact/contact.htm

<HK社会保険労務士事務所 連絡先>
TEL:03-6228-6138
〒104-0061 東京都中央区銀座2-4-1銀楽ビル5F

東京都中央区の社会保険労務士(就業規則・助成金・労働問題・給与計算)