厚生年金基金から逃げる企業[東京 社会保険労務士]

 AIJ投資顧問の年金消失事件は、企業年金の一種である厚生年金基金の問題をあぶり出し、厚生労働省は厚年基金制度の廃止を打ち出した。

袋小路に入った厚年基金のいまを追った。

●利益を削ってでも 「経営に影響が出る前に早く抜け出したかった」。9月30日付で加入する新潟県機械金属工業厚年基金からの脱退を決めた

機械メーカー、太陽工機(新潟県長岡市)の役員は話す。AIJ事件が発覚した2月にすぐに基金から出ることを決め、わずか半年で脱退にこぎつけた。

 急いだのには理由がある。公的年金である厚生年金の一部と、企業独自の上乗せ年金を一体運用する厚年基金から脱退するには条件がある。

脱退を希望する会社が自社に割り当てられた損失(積み立て不足)を補填することだ。同基金はAIJに年金資産の16%を委託し、厚生年金部分にも

損失が発生していた。損失がさらに膨らめば負担はますます重くなる。

 太陽工機は前年度決算の純利益の2割近くにあたる9000万円を一時金として基金に支払う。それでも、同社役員は「将来の不安要素をなくせて

良かった」と語る。 こうした動きはAIJ問題をきっかけに広がっている。年金コンサルタント、オーヴァル・リスクマネジメント・サービシーズの宮原英臣

代表は「財務が厳しい基金の加入企業から相談が絶えない」という。一時金を負担する体力のある上場企業では今年すでに13社が脱退を決め、

過去5年で最多となった。 長野地裁は8月、財政が悪化した厚年基金からの脱退をめぐる訴訟で、長野県の建設会社の脱退を認める判決を出した。

「脱退の自由」が認められ、「判決後に問い合わせが増えた」(石油業基金の常務理事)。脱退を検討する企業への追い風が吹いている。

●厚労省に指導要請 一方で、基金が脱退を認めない事例も少なくない。8月末、東京の工具メーカーは加入する基金に脱退を申請していたが、

否決された。代議員会での否決を盾にとる基金に対し、同社は厚労省に基金への是正指導を要請するなど両者の対立は鋭くなってきた。

 基金が脱退を認めない背景には、厳しい台所事情がある。中小企業が同業でつくる総合型基金の多くは受給者が増える一方、現役の加入者は

減っている。一時金を用意できる企業が抜け、経営の厳しい企業ばかり残れば基金運営は困難になる。

 最近、企業の間で「裏技」の存在が知られつつある。会社を計画的に倒産させ、新しい会社を立ち上げて従業員を移せば、実質的に手間もお金も

かからず脱退できるというものだ。基金に加入する印刷会社社長は「残れば残るほどじり貧。早く抜けられるなら何でもする」と打ち明ける。

逃げる企業と追う基金――。両者の駆け引きは激しさを増す。

日本経済新聞

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