待機児童解消しない 子ども園

 民主党が2009年衆院選のマニフェストに掲げた「待機児童の解消」が進まない。

民主党が政権をとってから今年にかけて保育所入所を申し込んでも入れない児童は2%の

微減で、総数は2・5万人前後で高止まりしている。厚労省の想定を大幅に上回る300万人

超の潜在的な待機児童がいるとの民間推計もあり、見かけの数字より保育施設不足は深刻だ。

 4月時点の待機児童は、民主党が政権を獲得した09年には2万5384人だった。12年は

2万4825人とほぼ横ばいだ。家計を補うために働きに出る主婦が増えたことによる需要増を

吸収できていない。 自民党政権時代から保育所の増設や低年齢児(0~2歳)保育の充実など

を進めたが、現在の方法で統計をとり始めた01年以降、待機児童は一時期を除き2万人を超す

水準で推移。民主党政権への移行時にはリーマン・ショックの影響で状況は深刻さを増していた。

保育所の定員は3年前に比べ10万人以上上積みしたが、定員が増えれば入所希望者数も増える

「いたちごっこ」が続く。 潜在的な待機児童にも注意が必要だ。認可保育所への申し込みを

ベースに算出した潜在待機児童数は厚労省によると85万世帯。一方、東京財団の石川和男

上席研究員は「働く親のニーズから逆算すると、潜在待機児童は198万世帯、364万人に上る」

と指摘する。 今月末に第1回の会合が予定されている社会保障制度改革国民会議でも

待機児童対策を含む子育て施策が一つの焦点となる。ただ、子育て支援の制度設計のベースは

厚労省の推計値だ。現役世代が働きやすい環境を整えることは、女性の社会進出を後押しし、

少子高齢社会で労働力を確保するためにも重要で、「まずは保育ニーズを正確に把握する

必要がある」(石川氏)。 都市部の保育施設不足は特に深刻だ。首都圏、近畿圏の7都府県

とその他の政令指定都市・中核市で全待機児童の8割近くを占める。4月までの1年間で全国最多

の268人の待機児童が増えた大阪市の担当者は、「市内の保育施設を整備すればするほど、

子育て層が流入して推計を上回るニーズが出る。結果的に待機児童が増えてしまう」と指摘する。

 市町村独自の取り組みで、待機児童の減少に成功したところもある。1年間で792人の待機児童を

減らした横浜市では各区に市の職員を配置して、細かいニーズを把握すると同時に、認可外保育所の

空き情報や保育ママの情報の集約を行っている。保育所を作りすぎても少子化で施設が余ってしまう

恐れもあり、今後は「認可外保育所や児童が減っている幼稚園をうまく活用することが重要」

(横浜市の担当者)になってくる。 社会保障と税の一体改革では、消費増税に伴う増収分のうち

毎年7000億円を投入して保育サービスを充実することを決めた。17年度までに認定こども園の

拡充などで3歳未満児の保育利用数を36万人増やすことを見込むが、潜在需要の360万人には

届かない。

日本経済新聞