年金積立て不足、運用改善へ

 富士通は英国子会社の企業年金に1000億円規模で資金を拠出する。同子会社は多額の積み立て不足を抱えており、

運用の元手になる資産を増やして運用改善を狙う。資金拠出額が今期決算で損失になるわけではないが、自由に使える

手元資金の減少を招く。海外企業の買収を通じたグローバル戦略が広がるなか、海外の年金への対応が課題として浮上

してきた。 富士通は2013年3月期中に、英国子会社、富士通サービスの年金に資金を拠出する。1990年に買収した

名門コンピューターメーカーのICLが母体で、歴史が長く年金負担も重かった。前期末で約1000億円にのぼる海外子会社

全体の不足額の大半は英子会社が占めるもよう。海外分は富士通全体の不足額の約4分の1を占める。

 日本の企業会計では積み立て不足が増えた場合は基本的に一定期間で費用処理をする。14年3月期から積み立て

不足を貸借対照表に計上するようになり、自己資本比率の低下要因になる。富士通の資金拠出は運用資産を増やし

高格付け債券などで運用することで、積み立て不足の急増を抑える狙いがあるとみられる。

 今回の資金拠出は会計上は資産の名目が替わるだけで、同額が損失になるわけではない。半面、今期は投資などに

回せる資金が減ることになる。海外年金が負担になる例は増えており日立製作所は前期、欧州統括会社の年金に

数十億円拠出した。

日本経済新聞