中途採用意欲高まる

IT(情報技術)や建設業界を中心に、企業の中途採用意欲が高まっている。人材サービス大手の

リクルートキャリア(東京・千代田)によると、11月の中途採用の求人数は7万1359人。リーマン・

ショック直後の2008年11月以来、4年ぶりに7万人台を回復した。 今年11月の求人数は、

10万人に達したリーマン前のピーク(08年1月)には及ばないものの、景気拡大期にあった06年

夏と同じ水準だ。 業界別にみると最も求人数が多いのは「IT通信・インターネット」。11月は1万

8137人で、7月から約18%増えた。急速に普及したスマートフォン(スマホ)向けのゲームや

電子商取引(EC)サイトの開発者の育成が社内で間に合わず、中途採用を増やす企業が目立つ。

「電気・電子・半導体・機械」は1万2793人で7月比約11%増。エコカーや衝突防止技術などの

開発を手がける部品メーカーの意欲が強い。業績不振でリストラが相次ぐ家電や半導体メーカーの

技術者を、求める中小企業も増えている。 「建築・不動産」も好調で、11月求人数は7月から

約23%増の7291人。東日本大震災からの復興需要や、消費増税前の駆け込み需要を想定し、

営業担当者などを確保する動きが出ている。 リクルートキャリアに登録した転職希望者が企業に

採用された「成約数」は、今年に入って前年比約10%増えている。ただ求人数は同25~40%増と、

成約の伸びを大きく上回っている状況だ。 求人数を、人材サービス会社に登録している求職者数で

割った「転職求人倍率」も上昇。11月は1・56倍と08年10月以降では最高だ。同業のインテリジェンス

の倍率も11月は1・46倍で、同社が調査を始めた08年1月からの最高を記録した。 製造業を中心に

足元の景況感は大幅に悪化している。今後も企業の中途採用の強い意欲が続くかは不透明だが、

リクルートキャリアは「少なくとも来春まで好調が続く」とみている。

求人が拡大傾向の転職市場だが、企業が求めるのは「特別なスキルを持つ即戦力」(リクルート

キャリアの畑中澄夫キャリアアドバイザー)で、社会人経験10年以上が中心だ。大学卒業後3年

以内の「第二新卒」の需要が多かったリーマン前とは様変わりだ。 優秀な人材獲得へ企業は

工夫を凝らす。 年間100人近くを中途採用してきたヤフーは今秋から、スキルの高い人材に絞って

採用する方針に変えた。能力が高ければ最高経営責任者(CEO)並みの年収1億円超もありうる

報酬制度を導入した。 積極的なM&A(合併・買収)で業容を拡大している楽天は、年間200人

ほどを中途採用している。楽天社員の紹介で採用が決まった場合には、紹介した社員に報奨金を

出す仕組みを整えた。

日本経済新聞