給与増で税額控除、増加分の最大10%

政府・自民党は2013年度税制改正に盛り込む雇用対策の税制の詳細を固めた。給与増を後押し

する税制では、従業員の平均給与を増やした企業を対象に、支払給与総額の増加分の最大10%

を法人税の納税額から差し引く。雇用を増やす企業には別の減税制度を適用。給与と雇用増を

それぞれ促す2つの減税で、雇用環境の改善を目指す。 政府は11日に閣議決定した緊急経済

対策に、企業の投資促進や雇用創出を目指す税制改正を盛り込んだ。その柱の一つが働く人の

給与増を目指す税制だ。自民党税制調査会で調整し、24日をめどにまとめる与党税制改正大綱に

盛り込む。 企業が従業員に払う給与を増やすと納税額が減る制度を導入する。従業員1人あたり

平均給与を増やした企業を対象とする。基準となる年を設け、その年と比べて給与の支払総額を

増やしていれば、増加分の最大10%を法人税額から差し引く仕組みを軸に調整している。

法人税から差し引ける上限は2割程度、期間は2~3年の措置を想定している。給与を少しでも増や

せば減税対象になるのか、一定の増額基準を設けるかは今後詰める。 平均給与を基準とすることで、

企業は雇用を増やさなくても給与を増やせば減税を受けられる。国税庁の民間給与実態統計調査に

よると、11年の平均給与は前年比0・7%減の409万円。10年前の01年と比べて10%も減った。

企業が賃上げに消極的なうえ、非正規労働の増加も背景にある。 新制度には非正規従業員の

正規雇用への転換を後押しする狙いもある。企業がパートやアルバイトなどの非正規で働く人を

正規社員に登用すれば、平均給与が上がり、給与総額を増やしていれば減税を受けられる。

非正規で働く人の多い若年層が待遇の安定した正規雇用に移れば、将来不安に根ざした消費不振

を抜け出す道筋ができる。 新規採用を積極的に増やす企業には、既存の「雇用促進税制」で

対応する。雇用を一定数を超えて増やした企業に対し、増加数1人あたり20万円を法人税から差し

引く仕組みだ。給与増と雇用増の2点で、企業活動を後押しする。 13年度税制改正は14年4月の

消費増税への環境整備が大きな焦点だ。消費増税は物価の上昇を通じて家計の実質的な購買力を

下げる。賃金が上がらなければ、増税が消費を冷え込ませる可能性は大きい。給与を増やす企業へ

の減税で雇用が増えたり賃金が上昇したりすれば、消費増税の影響を抑えられる。 政府・自民党は

13年度税制改正で、企業の研究開発や設備投資に対する減税制度も拡充する方針だ。安倍政権が

最も大きな課題に掲げる経済再生に向け、税制面での支援を充実する。

日本経済新聞