年収3%アップ

脱デフレ 企業も協力 政府は目標2%、その上をいこうと  ローソンは2013年度に、グループの20歳代後半

~40歳代の正社員約3300人の年収を平均3%引き上げる。子育て世代の生活にゆとりを持たせ、個人消費

の活性化につなげる意図がある。政府の産業競争力会議のメンバーでもある新浪剛史社長が、デフレ脱却を

目指すアベノミクスにいち早く呼応したのか。狙いを聞いた。期待感をつなぐ ――社員の年収を引き上げる狙いは。

「円安株高で企業業績に改善傾向が出ているが、雇用増や賃金アップに反映されるには2~3年かかる。

だがそこまで国民の期待感をつなぐのはたやすいことではない。デフレ脱却と経済成長を国民全体の意思として

やり遂げるには、企業も協力しなければ。公共投資のような人工的な景気浮揚策は限界がある」

――他の経営者からスタンドプレーといわれませんか。 「(1月23日の)第1回の競争力会議で、ともに仕事を

持つ夫婦が子どもを育てることができ、20~40代が職と賃金を確保できる社会を作る必要があると提言した。

自分の持論をそのまま述べたのだが、言い出した以上実行しなければと思い、すぐに組合に提案した。他の

経営者も昔は従業員だった人が大半で、出せれば出したいと思っているはずだ」 「オートメーション化もあり、

製造業など輸出産業の雇用吸収力には限界がある。就業人口は多いが、相対的に賃金水準の低い流通・

サービス業の底上げは大切だ」 ――なぜ3%か。対象世代も区切りました。 「政府の物価引き上げ目標が

2%なので、その上を行こうと。企業はデフレで売り上げは伸びず、コストを切り詰めてきたがそろそろ負の

サイクルから抜け出すべきだ。収益増へ向けて、社員の士気向上のために給料を上げる正のサイクルへの

転換が必要だ。これが数年後のデフレ脱却につながるとみている」 「年収アップの対象となる20代後半~

40代後半は子育て世代。ローソンでは社員の約7割を占めるが、生活費負担が重く、消費意欲も弱い。組合

も歓迎し、今春の労使交渉はなくなった」 ――賞与の上乗せではなく、ベースアップ(ベア)を実施すれば

よいのではないですか。 「当社の報酬体系は年功序列の要素はなく、職の等級に応じた年収になっている。

しかも30代以上は年俸制の管理職が多く、固定的な賃上げであるベアが対象者の多くに当てはまらない。

賞与時の支給だが、(上乗せ分は)来期以降も維持する方針だ」女性と高齢者 ――コンビニエンスストアは

加盟店の労働力が支えています。今回はそこに恩恵がありません。 「ローソンには約20万人のアルバイトが

おり、その収入が上がるようにすることが最終目標。3月から加盟店が潤うような色々な施策をとる」 「一つは

商品政策。女性向けや高齢者向けはまだまだ弱い。新商品を投入したり、野菜の質を上げたりして、収入を

増やすようにする。店舗のIT(情報技術)などへも手厚く投資して、加盟店の仕事を効率化し、働きやすい場を

作りたい」 ――競争力会議ではこれからどんなことを提言するつもりですか。 「日本は財政から企業、個人

まで節約志向が定着している。競争力会議でも大企業の交際費を3年間、損金扱いにできるよう税制を見直

すべきだと提案した。とにかくお金が回るようにすれば、最終的には税収も上がり、負の連鎖も変わる」

「雇用の創出や起業の活発化につながる規制改革も提案したい。特に女性や高齢者はもっと活用できる。

例えば『保育士補』という資格を作って、子育てが終わった女性が保育園で不定期でも働けるようにすれば、

少し家計が楽になる。世帯としての収入を上げていくことが重要だろう」

日本経済新聞