雇用規制 特区

政府は残業や解雇などの雇用条件を柔軟に設定できる規制緩和を、地域限定で検討する。

安倍晋三首相の主導で決める国家戦略特区を活用し、成長産業への労働移動など人材の流動化

を進め、日本経済の活力を高める。参院選前は世論の反発を招きかねない労働改革に踏み込まな

かったが、特区に絞って抜本的に規制を改革する。 国家戦略特区は地域を限って大胆な規制緩和

や税制優遇に踏み切る仕組み。政府は8月末にも東京、大阪、愛知の三大都市圏などを特区に指定

する。 6月の成長戦略には、都心部にマンションを建てやすくする容積率の緩和や公立学校運営の

民間開放など優先的に取り組むべき緩和策として6項目を盛り込んだ。政府は秋の臨時国会に関連

法案を提出する方針。成立すれば年内にも実現する。 政府はこの特区で規制緩和する項目をさらに

10~20項目上積みする。内閣官房が雇用、医療、農業、エネルギー、クールジャパンといった分野で

約130の検討項目をまとめ、各省と協議に入った。第2弾の項目の関連法案は来年の通常国会に

提出し、来年中の早い時期の実現を目指す。 第2弾の中核となる雇用分野ではまず解雇規制を

緩和する。企業が従業員に再就職支援金を支払えば解雇できる「事前型の金銭解決制度」の導入に

関して調整する。全国に支店を持つ大企業の場合、特区内に本社があれば地方の支店も適用対象

にする案がある。雇用不安が広がるのを抑えるため、中小企業に適用しないことや、雇用の流動性が

高い成長産業に限ることなども浮上している。 有期雇用契約の期間を延長しやすくすることも課題だ。

同じ職場で5年を超えて働く契約社員らは、本人が希望すれば無期雇用に転換しなければならない。

この規制を緩めて企業の人材確保に幅を持たせる。 企業の従業員は原則、労働基準法などが定める

法定労働時間(1日8時間、週40時間)のしばりがある。一定の条件を満たした社員には法定労働時間

の規制を適用しない「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入も議論する。 企業と従業員の合意で

労働条件を柔軟に決めることができれば、人材の新陳代謝が活性化する。企業の新規採用が拡大した

り、成長産業への労働移動が円滑に進んだりしやすくなる。雇用・解雇規制の緩和は産業界の要望が

強いが、賃金の低下や労働条件の悪化につながるなどの反発も根強い。

日本経済新聞