賃金水準、65歳まで維持
ヤマト運輸は2016年春をめどに、65歳まで働き続けることを促す新賃金制度を導入する。60歳を境に
年収が大きく落ち込む賃金カーブを見直し、60~65歳の賃金を60歳到達前と同水準にする。40~50
歳代の賃金上昇を緩やかにして原資を確保する。労働者人口が減る中、高齢者の活用は産業界共通の
課題。YKKグループやNTTグループも高齢者雇用のため賃金カーブを見直しており、「65歳定年時代」
を見据えた賃金制度の改革が広がりそうだ。 今年4月に「改正高年齢者雇用安定法」が施行、企業は
60歳を超えて働き続けたい高齢者を雇い続けるよう義務づけられた。厚生年金の支給開始年齢引き上げ
に伴う措置で継続雇用の対象年齢は25年4月にかけ65歳に段階的に引き上げられる。厚生労働省の
研究会が昨年まとめた推計では、高齢者雇用を促す制度などで30年の60歳以上の就業者数は最大
1354万人と、10年に比べ約210万人増える見通しだ。 高齢者の労働意欲を引き出すには賃金面の
改善が課題。産業界では実績や役割などに応じて賃金を上乗せする動きがあるが、現役世代も含めた
賃金制度全体を見直すケースは少なかった。 ヤマトは11年に定年を65歳に延長した。現行では60歳
を境に年収が3~4割減るが、65歳まで基本給を含めて賃金全体の水準を維持する仕組みに改める。
総人件費を大きく膨らまさないよう、40歳代以降の現役社員の基本給水準を抑えるほか、家族手当を
減らす方針。 すでに労働組合に新制度を提示しており、現在より賃金カーブが下がる年齢などについて
調整に入る。同社の社員で配達員は5万人強。このうち60歳以上は現状1700人で、5年後には約3000
人に増える見通し。新賃金制度の導入で、経験を積んだ高齢者を戦力の柱に育てる。 40~50歳代を
中心とする現役世代には、一定の収入減で痛みを強いる面があるため、働きに応じて賃金を積み増す
成果給部分を拡充する方針だ。 YKKグループは今年4月から61歳まで定年を延長し、賃金水準も維持
する制度を導入。NTTグループは10月から、再雇用した社員の年収を従来から100万~200万円程度
上積みする制度を導入する。
日本経済新聞
2013年7月30日 9:46 PM | カテゴリー:社労士