女性管理職登用に目標

女性管理職を増やすため、数値目標を導入する企業が相次いでいる。日本企業の多くは

女性管理職が1割以下で、欧米に比べ大きく見劣りする。多様な視点での事業運営や海外

での人材確保に向け、各社はより女性を生かす経営にかじを切る。数値目標を実現するため

育成計画や休暇制度などで知恵を絞り始めた。 日本企業の女性管理職の比率は2000年

代初頭には3%程度だった。1986年に施行した男女雇用機会均等法を受けて入社した女性

が「管理職適齢期」になり改善しているが、12年でも6・9%にとどまる。欧米主要国の3~4割

との差は大きく、政府が「20年までに30%」とする指導的な地位に占める女性比率の目標にも

遠い。 女性の部課長比率が4割を超えるパソナグループなど積極登用の例はあるが、日本企業

ではまだ少数派だ。 現在、女性管理職が3・3%にとどまっているLIXIL。15年度までに管理職

昇格者の3割を女性にする目標を持つ。「女性のアイデアは企業の活力の源泉になる」(八木洋介

副社長)。多様な人材の活用で事業運営を柔軟にすることが重要とみる。 国内の労働力人口が

減少するなか、女性の活用は不可欠。海外での人材採用のためにも企業は女性の活用実績を示す

必要がある。リコーは管理職に占める女性の割合を16年度に5%、20年度に10%にする目標を

決めた。13年度の女性管理職は100人程度で2・8%。3年でほぼ倍増させる。同社の売上高の

半分以上は海外市場。「トップに女性が少ないままでは、人材の多様性がない企業と海外で判断

されてしまう」(人事本部) 目標を実現するため、事業本部ごとに育成計画を作成、部門長に管理

させる。来年1月からは配偶者の転勤を理由に、3年間の長期休暇を得られる仕組みも新設。女性

が働き続けやすい仕組みを整え、管理職候補の女性の層を広げる。 日本IBMは15年までに

女性管理職比率を15%前後に引き上げる。すでに700人近い女性管理職がおり、比率は12・8%

だが、世界のIBMの平均25%に比べるとまだ低い。日本は主要国で最低水準だ。係長、課長、

部長クラスといった階層別に教育プログラムを設け、次の階層への昇格意識を底上げする。 かつて

「一般職」を設け、男女で仕事を役割分担することが一般的だった金融業界も動く。損害保険の

NKSJホールディングスは役員が月1度面談し、女性のキャリア相談に乗るメンター制度を導入した。

傘下の損害保険ジャパンで一般職入社の女性を執行役員に起用するなどモデル作りも進む。

第一生命保険も女性だけを対象にした管理職養成プログラムを設け、一般職出身者の意識改革を

徹底する。 積水ハウスも女性向け店長育成プログラムを用意。ソニーは女性リーダー育成塾を開設

したほか、育成に貢献した上司を評価する。 女性の登用は企業活動に欠かせないが、安易な数値

目標の設定には注意が必要。リクルートワークス研究所の石原直子主任研究員は「能力不足の女性

をあえて引き上げてしまっては本人にも企業にも弊害を及ぼす」という。男性との公平性を妨げる懸念も

あり「目標を設けるだけでは、数合わせになってしまいかねない」(旭化成の伊藤一郎会長)との声もある。

日本経済新聞