2014年 06月

開業支援ワンストップセンター

起業手続き1ヵ所で、戦略特区、官民共通窓口、外資誘致狙う、登記・税・電話など迅速に。

政府は地域を限って規制緩和を先行させる国家戦略特区で、起業の際に必要な官民の

手続きを一元化する窓口を年内に新設する。登記や税務、年金などの行政手続きにかかる

時間を1週間程度に半減し、電気やガス、電話回線の申し込みも同じ場所でできるようにする。

窓口は英語にも対応し、海外からの企業誘致を後押しする環境を整える。 16日の

産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)に示す成長戦略の素案に盛り込み、17日の

国家戦略特区諮問会議で規制緩和の追加項目として正式に決める。政府は

対日直接投資残高を2020年に35兆円に倍増する目標を掲げており、外資系企業の

国内投資を促す。 新設する「開業支援ワンストップセンター」(仮称)は、国家戦略特区

に指定された全国6地域のうち東京圏や関西圏、福岡市を対象に想定する。

現在、日本で企業を設立するには書類の準備や手続きに2~3週間程度かかる。

役所ごとに業務が異なり、海外からの投資受け入れに積極的なアジアのライバル国に

比べて手続きが煩雑だとの指摘があった。 シンガポールはオンライン申請が可能な

ため数日、韓国は10日程度で手続きが完了する。起業支援の窓口は、韓国が08年に

ソウルに設けた外国人の生活を後押しする「ソウル・グローバルセンター」をモデルにした。

行政上の手続きに加え、クレジットカードや携帯電話なども一括して申請できるよう民間企業

と連携する。 戦略特区の追加策には起業する外国人の在留条件の緩和を盛り込む。

現在は設立時に(1)2人以上の常勤職員の雇用(2)最低500万円の投資――のいずれか

を満たす必要がある。今後は1~2年以内に条件を満たせる見通しなら在留を認める。

家事や育児を手伝う外国人の受け入れも先行的に拡大する。現在は外国人の外交官や

専門性の高い技術者ら「高度人材」が雇用する場合に限っているが、日本人の家事支援

のための入国や在留を認める。資格取得の試験は、地域によって年1回から2回に増やす。

積極的な融資環境づくりもめざす。成長戦略に「小口(融資先)の資産査定は金融機関の

判断を極力尊重する」と明記し、設立直後のベンチャーや財務内容は良くないものの技術力

がある企業を支援しやすくする。 金融商品やM&A(合併・買収)の手続きを英語で相談

できる行政窓口を作るほか、金融関連の法令やガイドラインの英語版も整備。英国の制度を

参考に海外の金融機関を呼び込む専門家を置き、特区を国際金融センターに育てる。

特区への交通アクセスの向上も重視する。羽田空港や関西国際空港は、都心と結ぶ深夜の

バスや鉄道が少ないとの指摘がある。認可基準を緩和して割増運賃などを柔軟に設定可能

にし、現在は30日前までに届け出が必要な運行ダイヤの変更を7日前でよいようにする。

日本経済新聞