心の病 労災請求最多

<心の病>労災請求最多1409件…昨年度

厚生労働省は27日、2013年度の脳・心臓疾患と精神疾患の労災補償状況を公表した。

仕事上のストレスによるうつ病などの精神疾患で労働災害が請求されたケースは1409件で、

統計が残る1983年以来、最多となった。労災認定の件数は742件で、前年度を下回った

ものの高止まりの状況となっている。

【うつ病で自殺は「性同一性障害理由に退職強要」が原因】遺族が提訴

◇パワハラ、セクハラ改善せず

労災認定件数のうち、精神疾患によるものは436件(前年度比39件減)で、過去最多だった

前年度を下回ったものの、400件を超える件数が続いた。脳・心臓疾患は、請求が784件

(同58件減)、認定は306件(同32件減)だった。

精神疾患の労災認定のうち、セクシュアルハラスメントが原因となったケースは40件(うち自殺1件)

で過去最多。パワーハラスメントは55件で2年連続で過去最多を更新。

精神疾患で認定されたケースを、年代別でみると30代が161件で最も多く、40代106件、

20代75件。原因別では「仕事内容・量の大きな変化」と「パワハラ」がともに55件で最多、

「悲惨な事故、災害」の49件も目立った。

脳・心臓疾患の労災認定は50代が108件と最多。60歳以上は前年度から8件増えて50件

となった。

労災認定されたケースの残業時間は140時間以上160時間未満が22件で前年度より6件増え、

長時間労働が改まらない現状が浮かんだ。

同省職業病認定対策室は「労働者の健康調査で仕事にストレスを感じている人が60%を超える

などストレスや長時間労働が精神疾患の増加の原因ではないか」と分析している。

◇解説…過労死防止法生かせ

「働き盛りの人が仕事で命を落とすようではこの国に未来はない」。過労死・過労自殺の被害者の

家族はそう語っている。20日に成立した「過労死等防止法」は遺族の願いが込められた法律だ。

遺族の危惧を裏付けるように、2013年度の統計が示す労災の状況は最悪のレベルが続いている。

この現状に過労死の実態の調査・研究を掲げた同法ができた意義は大きい。脳・心臓疾患や

精神疾患以外の病気でも、長時間労働が症状を悪化させることが指摘されている。実態を調査し、

長時間・過重労働が身体に及ぼす影響を解明することは、埋もれた「過労死」の救済につながる。

同時に、長時間労働を防ぐことが優先課題として改めて浮かんでくるだろう。

一方で政府は、成長戦略として、労働時間の規制(1日8時間、週40時間)から除外する労働者

を作る制度を進めようとしている。「残業代ゼロ」の批判が目立つが、同時に「自由な働き方」とは

裏腹の際限のない長時間労働を助長する危険性も指摘される。労働者の命を犠牲にする

「成長戦略」が許されるわけはない。

過労死被害の現実を前に求められるのは、命を守る雇用戦略だ。

毎日新聞