労働時間規制の緩和制度導入

労働時間規制の緩和制度導入、伊藤忠・富士フイルム検討、企業、専門職から拡大要望。

伊藤忠商事や富士フイルムなど主要企業が、働いた時間ではなく成果に応じて賃金を払う

「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入の検討を始めた。政府は欧米に比べて劣るとされる

ホワイトカラー層の生産性向上のために、同制度の導入に向け2015年の法改正を目指している。

企業は国が今後、制度の詳細を詰めるのに合わせて準備を進め早期導入を目指す。

政府が今年6月に成長戦略の目玉として導入を決めたホワイトカラー・エグゼンプションは、

年収1千万円以上の高度な専門職を対象に、労働基準法で定められた1日8時間、週40時間の

労働時間規制を外す制度。厚生労働省の審議会で具体的な制度設計を議論しており、15年の

通常国会で労基法の改正案を提出し、16年春の施行を目指している。 導入には労働組合との

協議などに時間がかかるため、企業は国の制度設計の完成を待たずに検討を始めた。早い段階

で準備を進めることで、経団連などを通じて要望を制度設計に反映してもらう狙いもある。

伊藤忠商事は、年収1千万円以上の総合職の大半をホワイトカラー・エグゼンプションの対象と

することを念頭に、導入を検討している。商社の総合職の業務は新規ビジネスの発掘など企画型

の業務が中心で、高度な専門知識やスキルが求められるという。 富士フイルムは幅広い職種に

ついて早期の導入を検討している。HOYAも営業、企画、研究開発部門などでの導入を想定する。

東芝や日立製作所も導入を検討している。 タカラトミーは労働時間の長さよりもヒット商品の多さで

評価できるため、おもちゃ開発担当に適した制度とみる。時間によらない働き方になれば、勤務後に

「映画鑑賞や流行の店を訪れるなど、顧客の動向を意識した仕事のやり方に変わる」と期待する。

厚労省の審議会で進めている具体的な制度設計では、「少なくとも1000万円以上」としている

年収基準の最終的な範囲や対象職種が焦点となる。企業はできるだけ柔軟な制度設計を国に

求めている。三井物産で人事部門を担当する北森信明執行役員は「基本的にホワイトカラーの

全職種を対象にした方がいい」と強調したうえで「区切る年収は700万円以上が妥当だ」と話す。

経団連の榊原定征会長は「幅広い人が対象になるよう今後も求めていく」方針だ。 日本経済新聞社

が主要企業の社長・会長を対象に6月に実施した調査では、回答した144人のうち

「制度を利用したい」と回答した企業は25%あった。一方、労組側は年2千時間を超える正社員の

長時間労働が続く中で「規制を外すのはおかしい」(古賀伸明連合会長)と反発している。

▼ホワイトカラー・エグゼンプション 事務職などホワイトカラーと呼ばれる労働者を対象に、

労働時間の規制を外す。残業代や深夜・休日手当が払われず、賃金は従来の裁量労働制より

成果重視の傾向が強まる。欧米では多くの国が導入済みで米国では雇用者の20%程度が対象だ。

日本経済新聞