厚年基金、中小の年金存続支援

厚年基金、生損保が受け皿、東京海上や日生、商品提案、中小の年金存続支援。

財政悪化で解散を迫られている中小企業の厚生年金基金の受け皿として、

民間保険会社の企業年金プランを活用する動きが出てきた。母体企業に負担が発生し

にくい年金プランを保険各社が提案、一部の企業は採用を内定した。厚年基金の解散後も、

中小企業の従業員の福利厚生を一定程度維持できる仕組みだ。 厚年基金は加入者に

約束する予定利回りが高く、年金給付に備える積み立ての不足が発生しやすかった。

今年4月の改正厚生年金保険法施行で財政が悪化している基金は解散を迫られており、

今年4月から7月末までに16基金が解散した。 厚年基金の資産残高は今年3月末時点で

31兆円ある。基金が解散すると、企業は新たな企業年金をつくるか、企業年金をやめてしま

うかの選択を迫られる。 人員や財政に余裕がない中小企業では、年金をやめてしまう企業も

少なくない。企業年金を続けられるように、保険各社は事業主の負担やリスクを減らしたプラン

の提案を始めた。 東京海上日動火災保険は、厚年基金に加入していた企業を対象とする

年金セミナーを増やしている。基金が解散する20社から4月以降に確定拠出年金への切り替え

の内定を得た。 確定拠出年金は従業員が運用責任を持つ。運用収益が下がっても企業側に

穴埋め負担が発生しない。三井住友海上火災保険や損保ジャパンDC証券も、中小企業向け

の新しい確定拠出年金プランを年内にも始める計画という。 日本生命保険や第一生命保険は

新しい確定給付企業年金プランの運用を始める。年金資産は最低1・25%の予定利率を生保

側が保証する。厚年基金の従来の予定利率よりは低いが、生保による最低利率保証があるため

母体企業に追加負担が生じにくい。 厚生労働省の3月時点の調査によると、今ある基金の3分

の1にあたる195基金が解散などを検討していると回答した。解散基金が増えるのは確実な情勢で、

厚生年金基金制度は事実上廃止の方向に進んでいる。もともと厚年基金の運営事務を多く受託

している信託銀行も含め、解散する厚年基金マネーの奪い合いが金融界で激しくなりそうだ。

▼厚生年金基金 日本の年金制度は3階構造になっている。1階は全国民が加入する国民年金

(基礎年金)で、2階は会社員が加入する厚生年金だ。1階と2階は公的年金と呼ばれる。3階は

企業が独自に掛け金(保険料)を拠出する企業年金だ。厚生年金基金はこの3階部分の企業年金

の一種だが、2階部分の一部も一体で運用・給付している。 厚年基金は中小企業の会社員が

主体となっている。積み立て不足を抱えた基金が2012年のAIJ投資顧問による年金消失事件に

巻き込まれた。国は同事件を機に厚年基金の解散を促す法律を今年4月に施行した。

日本経済新聞