マタハラ行為による病院名を公表
マタハラ防止を訴える厚生労働省の文書 マタニティハラスメント(妊産婦への嫌がらせ行為。マタハラ)行為による男女雇用機会均等法違反で、厚労省が牛久市内のクリニック名を公表した問題で、県医師会の小松満会長は常陽新聞の取材に対し「医師会としては今週金曜日に会議を開いて対応を検討する。裁定委員会を開こうと考えている」と述べた。裁定委員会は倫理違反行為をした医師を対象に開かれる。今回のケースは「倫理違反に該当する」という。 公表されたのは、同市牛久町の「牛久皮膚科医院」と代表者の60代の男性理事長。厚労省によると、妊娠・出産等を理由にした解雇などの不利益取り扱い禁止を定めた男女雇用機会均等法に違反して、当時20代の看護助手女性を解雇した。茨城労働局と厚労省の是正勧告に従わなかったことから、同省は4日付で事業者名を公表した。
小松会長は「とんでもない事件で、あってはならないこと。普段から男女共同参画には医師会も取り組んでいるのにとんでもない行為」と理事長を厳しく批判。その上で医師会会員全員に再発防止の文書を配布するという。
小松会長によると、6月にひたちなか市で眼科医になりすましたタクシー運転手男性(51)が診療行為を行って逮捕された事件があったことから、「(医師会に入る際は)郡市医師会で厳しく面接をして、医師会の在り方、倫理、義務を指導する予定だった」という。
今回明らかになった理事長について「医師会員として付き合いが全く無い人だった。ほかの医師との交流が無かった」という。その上で「私としては(理事長に)何らかの責任を取ってほしいと思っている」との考えを示した。
理事長は竜ケ崎市・牛久市医師会の文化厚生委員会に所属しているが「全く活動していなかったようだ」という。同医師会の池田八郎会長に取材を申し込んだところ、池田会長は9日までに「話すときはこちらから連絡する」とだけコメントした。
県医師会事務局によると「理事長本人とは連絡がつかない状態」という。
同省雇用均等政策課によると、理事長は同省の調べに対し、女性看護助手を妊娠を理由に解雇した事実は認めた上で「均等法を守るつもりはない」と話したという。同法違反に対する罰則規定は無いが、報告聴取を拒否したり虚偽報告をした場合は20万円以下の過料が科される。
茨城労働局雇用均等室によると、県内全体でのマタハラ相談は、今年度は8月末で17件、14年度27件(うち8月末で7件)、13年度は26件(うち8月末で13件)という。昨年同室に寄せられた相談例では「妊娠による契約社員・派遣社員の雇い止め、解雇などがあった」「切迫流産やつわりなどの体調不良で不利益な取り扱いを受けた」などがあるという。同室では「事業者名公表で終わりではなく、均等法に沿った雇用管理がなされるよう引き続き粘り強く指導を行う」と語った。
女性の労働問題に取り組んでいる圷由美子弁護士は「制度としてあった事業者名公表がなされたのは大きな一歩」としながらも、罰則規定が無いことや事業者名公表が解雇撤回につながらないと指摘。「解雇撤回には裁判に訴えるしかない。今後法改正をしないといけない。公表だけでは解雇された人の権利回復にはつながらない。現状では(マタハラ被害の女性は)自分の生活のことで一杯で裁判どころではない」と話した。
圷弁護士は「立法や行政での水際での是正が必要。マタハラが起きてからでは遅い」と、行政による救済措置の確立を訴えた。
常陽新聞
2015年9月11日 11:29 PM | カテゴリー:社労士