2015年 12月

厚生年金、中小のパートに、国民年金保険料、出産前後免除も

厚生年金、中小のパートに、国民年金保険料、出産前後免除も
加藤勝信一億総活躍相は24日、日本経済新聞のインタビューで、老後に手厚い給付を受けられる厚生年金の対象を、中堅・中小企業で働く週30時間以内の短時間労働者に広げる必要性を強調した。出生率1・8の目標を達成するため、国民年金は出産前後の女性の保険料免除を検討したいと表明した。26日にまとめる緊急対策に盛り込む。 厚生年金の適用拡大は、安倍政権の経済政策アベノミクスの新たな第3の矢「安心の社会保障」の柱。来年10月から従業員501人以上の企業のパートなど短時間労働者に広げることは決まっている。総活躍相は「対象を漸次拡大していこうというのは一つのコンセンサスだ」と述べ、500人以下にも広げる考えを示した。女性が安心して働ける環境づくりにもつながるとみている。 保険料の半額を支払う中堅・中小企業には負担増となる。総活躍相は「労使で話ができたところからやってもらうというやり方もある」と各企業の労使合意を前提にすべきだとの認識を示した。 かつて民主党政権が100万人のパート労働者に厚生年金の対象を広げようとしたところ経済界が反発。501人以上の企業で働く約25万人に対象を絞った経緯がある。 出産前後の女性の国民年金の保険料免除は、出生率1・8の実現をめざす第2の矢「子育て支援」の具体策の一つ。出産や子育て期にかかる出費軽減につなげる。総活躍相は「準備を進める」と前向きだった。 現在、厚生年金に加入する女性は産休期間中の年金保険料を免除されている。サラリーマンの妻はもともと国民年金の保険料負担がない。しかし、自営業者など国民年金だけに加入する女性の保険料は免除されておらず、不公平との指摘があった。免除制度が出来た場合の対象者数は年間で約20万人を想定している。 総活躍相は「児童扶養手当の拡充や増額を検討していきたい」と意欲を示したが「恒久的な財源を見つけねばならない」とも語った。26日の緊急対策の多くは今年度補正予算で裏付けるが、総活躍相が表明したこれらの施策は来年度予算での対応を検討する。
厚生年金、中小のパートに――緊急対策案、家計支援の色彩濃く、年金改革骨抜きも。   一億総活躍社会に向けた緊急対策案は、最低賃金の引き上げ目標や低年金の高齢者への給付金支給などを盛り込み、家計支援の色彩が色濃い。 「現実的な状況を踏まえてやってほしい」。24日の経済財政諮問会議の終了後、日本商工会議所の三村明夫会頭は最低賃金の3%引き上げについて記者団に不満を漏らした。安倍晋三首相は会議で「最低賃金1000円を目指す」と表明したが、大幅アップには中小企業の懸念が強いためだ。 最低賃金1000円は民主党政権も公約に掲げた。当時も2020年までに全国平均で時給1000円を目標に掲げたが企業の反発で現実路線に転換した経緯がある。 低年金者への給付金は5000円を軸に検討したが、3万円に増額する方向で最終調整する。対象者は1000万人規模となり、3000億円超の財源がかかる見通し。 給付金は消費テコ入れが目的だが、年金をめぐっては給付額を毎年1%ほど抑える「マクロ経済スライド」を15年度に発動したばかり。給付金という「別枠」でお金を渡せば、年金改革は骨抜きになりかねない。
日本経済新聞