診療報酬と介護報酬の改定

入院から在宅へ、誘導、診療・介護報酬、6年ぶり同時改定。

 財務省と厚生労働省は25日、2018年度予算編成を巡り、診療報酬と介護報酬の改定の検討に入った。6年ぶりの同時改定により、団塊の世代が75歳以上になる超高齢化社会を前に、効率的な医療・介護の体制を整える。両省は入院から在宅へ誘導する考えだが、社会保障給付費の抑制にどこまでつながるか。持続可能な社会保障制度に向け調整を急ぐ。

病床体制
リハビリも重視
 25日に開いた財政制度等審議会で政府内の検討が始まった。試算だと社会保障給付費は全ての団塊の世代が75歳以上になる25年度に148・9兆円と17年度から23%増える。内訳をみると、年金はあまり増えないが、医療費は38%増、介護費は86%増にそれぞれ膨らむ。両報酬をマイナスにできれば、社会保障給付費を抑え、国民負担の増加も和らげられる。

 両省は6年ぶりの同時改定にあわせ、医療と介護のあり方を一体的に見直す。患者の需要にあった効率的なサービス体制を整えるのを課題とする。入院患者を減らし、地域の医療・介護サービスを受けながら在宅で過ごす人を増やせるようにするのが理想的な姿だ。

 現在は重症患者のための「急性期病床」を多くそろえた医療機関に手厚く診療報酬を回す仕組みになっている。高齢者がリハビリできる「回復期病床」の需要が大きいのに、提供体制は急性期病床に偏りが激しい。報酬の構造を変え、超高齢化社会への対応を急ぐ。

算定基準
無駄な薬使わず
 財務・厚労両省はこうした考え方に沿って、診療・介護の両報酬を見直す。急性期病床に偏重した医療体制など、患者のニーズにあわず、医療費の無駄を生んでいる可能性がある。財務省は診療報酬の算定基準を厳しくする方針で、厚労省も報酬下げの検討に入る。削減する一方で、自宅を中心とした地域での医療・介護の連携サービスには診療報酬で支援する。財務省は算定にメリハリをつける考えだ。

 医療・介護のサービス費用の効率化も目指す。財務省は重複投与を防止する取り組みがおろそかな薬局への報酬を下げる方針。費用対効果の低い高額な医薬品の薬価も下げる。介護では一人暮らしの家を訪れ家事などを援助するサービスで、月100回以上利用するケースもある。財務省は1日当たりの報酬に上限を設けるよう求める。

水準1%で4500億円分
 前回16年度の診療報酬改定率はマイナス0・84%だった。財務省は今回、2%台半ば以上のマイナス改定を目指す。薬価引き下げに併せ、医師の給与にあたる本体のマイナス改定も求める構え。1%引き下げると、税金や保険料、患者の自己負担の合計で約4500億円減る。

 財務省は介護報酬についてもマイナス改定を主張する。前回15年度は2・27%のマイナスだった。
 ただ診療報酬については日本医師会のほか、与党議員にはプラス改定を求める声が強い。介護報酬も厚労省や介護事業者はプラス改定で譲らない構え。年末まで関係者間の攻防は激しくなりそうだ。

マイナス改定で
国民負担が減少
 ▼診療報酬・介護報酬 医療や介護のサービス価格は国が決める。いわば公定価格で、医療の単価を示すのが診療報酬、介護保険サービスの料金体系を示すのが介護報酬だ。患者側からみると、医療・介護に支払う料金となり、医療機関や薬局、介護事業者からみると収入になる。

 診療報酬は2年に1度、介護報酬は3年に1度、それぞれ改定することになっており、6年に1度は改定年が重なる。前回は診療報酬が8年ぶり、介護報酬は9年ぶりにともにマイナス改定とした。マイナス改定だと医療機関などの実入りが減り、国民負担も減る。

 診療報酬は医師の給与にあたる本体部分と薬価部分からなる。税金や保険料、患者の自己負担で賄う。総額は45兆円。過去10年は平均2・5%のペースで増加している。デフレで会社員の賃金は低迷しているが、医師らの収入は増えていることになる。介護報酬はサービスを提供する社会福祉法人や介護事業者に支払われ、総額10兆円超。10年前の1・6倍だ。

【表】診療・介護報酬改定の主な個別テーマ  
診療報酬 ○医師の技術料にあたる本体部分のマイナス改定 
 ○費用対効果の低い高額薬の薬価下げ 
 ○重症患者が入る病床の算定厳格化 
 ○重複投薬の防止などへの貢献が低い薬局の報酬下げ 
介護報酬 ○掃除や料理を手伝う生活援助サービスの使いすぎ防止 
 ○訪問介護や通所介護など収益率の高いサービスの報酬下げ 
 ○自立支援に消極的な通所介護事業所の報酬下げ

日本経済新聞