雇用促進税制の廃止

雇用促進税制、廃止へ、賃上げ重視に転換、自民税調、設備投資優遇も拡大(税予算2018)

 自民党税制調査会(宮沢洋一会長)は1日、非公式幹部会合を開き、2018年度税制改正の個別項目の扱いを決めた。雇用を増やした企業の法人税を減税する雇用促進税制は廃止する。一方で賃金を引き上げたり、設備投資を増やしたりした企業への減税を広げる。雇用情勢は回復しているため、今後は企業の賃上げに力点を置く。

 各省庁の税制改正要望を査定した。通称「マルバツ」と呼ばれる選別作業で、14日にまとめる与党税制改正大綱に盛り込む項目を絞りこんだ。所得税改革の増税対象者の線引きや、たばこ税の増税額や実施時期など、意見調整が済んでいない重要事項については今後も協議を続ける。

「3%以上」促す
 法人税では雇用促進税制の廃止を決めた。現在は正社員を「5人以上かつ全体の1割以上」増やした企業の法人税を1人につき40万円減らしている。同制度は廃止し所得拡大促進税制を広げる。同制度は企業が賃上げした際に増加分の一部を法人税から控除できる仕組み。改正後は、3%以上賃上げした企業の税額控除を増やす方向だ。

 設備投資に対する税優遇も増やす。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」などの新技術に対応した機器を導入した場合に、導入額の一部を法人税から差し引く。新型のセンサーやソフトウエアの導入を促し、技術革新を後押しする。中小企業向けでは新規に導入する機器の固定資産税の税率をゼロにする。固定資産税は赤字企業でも課税されるため、中小企業の税負担が軽くなる。

 安倍政権は生産性革命や人づくり革命を推進しており、安倍晋三首相も「過去最大の企業収益を賃上げや設備投資に向かわせるため、あらゆる施策を総動員する」と主張している。雇用重視から賃上げや設備投資の拡充を目指す姿勢に軸足を移し、生産性の向上を促す。

 中小企業が親族以外の企業や経営者にM&A(合併・買収)で事業承継する際の税制も見直す。土地や建物の取得にかかる不動産取得税や登録免許税を軽減して、承継しやすくする。

訪日消費後押し
 外国人観光客の買い物需要を喚起するための税制措置も拡充する。訪日外国人が日本国内で買い物をした時に、衣料品や工芸品などの一般物品と、化粧品や食料品といった消耗品の購入が合計5千円以上なら消費税の免税対象にする。従来は一般物品と消耗品をそれぞれ5千円以上買う必要があったが上限50万円の範囲で免税枠を広げる。

 観光庁によると、17年4月の免税店数は全国で4万532店。5年で約10倍に増えた。1~9月の訪日客の消費額は3兆2761億円を記録した。自民税調は出国時に1人当たり1000円を徴収する出国税(観光促進税)を新設し、インフラ整備などに充てる方針。同制度とあわせて観光振興を進める。

日本経済新聞