女性の管理職の登用

アベノミクスとウーマノミクス―成長へ女性の力を(けいざい解読)2013/02/10  日本経済新聞 朝刊  3ページ  1177文字  PDF有  書誌情報
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1月下旬の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)のインターネット中継をみると、討論者の意見は真っ二つだった。

企業に一定数の女性役員の登用を義務づけるクオータ制(割当制)の是非だ。 「企業の背中を押す」。2020年までに

上場企業の女性社外取締役を4割にすることをめざす欧州委員会のレディング副委員長は訴えたが、米銀行の女性幹部

は企業の自助努力に委ねるべきだと反論した。 「クオータ制をつくらないと女性が活躍する場が生まれない」「いや数値

目標には慎重だ」。自民党幹部の意見対立も同じ構図だ。それでも欧州では半分以上の国が導入済みか導入を検討中。

賛否は別にして、東レ経営研究所の渥美由喜研究部長は「日本でもまずは議論してみては」と話す。 ゴールドマン・サックス

証券が女性と経済を重ねた造語「ウーマノミクス」を唱えて14年。少子高齢化で労働力人口が減るなか、「女性は日本経済

の潜在力」と着眼した政策が広がりつつある。 国が女性の管理職や社員の登用に積極的な企業から優先的に物品や

サービスを調達する――。自民党は「ダイバーシティー(多様性)促進購入法案」を議員立法で準備している。旗振り役の

小池百合子衆院議員は「刺激を与えて企業が変われば、それが成長戦略になる」と語る。 政府調達の際に女性に優しい

企業に加点するしくみは自治体で先行している。内閣府によると30以上の道県で導入済み。法案が成立すれば女性活用

への追い風となる。 もちろん、これだけで女性の就業率が高まるかは不明。働く女性の約6割は出産時に仕事をあきらめて

しまう。20代後半から30代の女性の労働力率が落ち込む「M字カーブ」は今も残るが、これを解消すれば国内総生産を

1・5%押し上げるとの試算もある。仕事と子育ての両立を支援する政策や、企業風土づくりがカギを握る。 面白いのは、

育児に参加する超党派の国会議員でつくる「イクメン議連」共同座長の柚木道義衆院議員(民主党)の提案だ。育児休業中

の給付金を休業前給与の5割から10割に引き上げ、男性に育児休業取得期間を割り当てるべきだという。 2500億円の

雇用保険の財源確保が課題だが、「ノルウェーではイクメン休暇で女性のM字カーブも解消し、出生率は2台に回復した」

。議連は実現に向け月内にも活動を再開する。 政府は13年度予算案で保育所の定員を7万人増やす。一方で70~74歳

の医療費の自己負担を本来の2割から1割に据え置くため、毎年約2000億円の国費を投じる。このかなりの部分を保育所整備

に回せば、待機児童を減らし、子育て世代をもっと応援できるはずなのに、と思う。 安倍晋三首相は13日にも「若者・女性活躍

推進フォーラム」を開く。5日の衆院本会議では「女性の力の活用」に意欲を示した。その具体策はアベノミクスの論点の一つだろう。

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