人材育成
銀行員として多くの時間を人事部門で過ごした。その経験から、銀行経営には何が大切かと問われれば
人材がすべてだと断言する。当行が掲げる「三位一体経営」は顧客、株主、従業員の3者を大切にする。
これを忘れては、どんな制度もうまく機能しないだろう。 従業員には能力の差がある。上位層が2割、
中間層が6割、下位層が2割とよく言われる。当行にも当てはまるが、どの従業員にも働きがいのある職場
にしたい。仕事があまりよくできない従業員を切り捨てるのではなく、能力を発揮しやすい場を提供する。
そうすると仕事ができる従業員は「人を大切にする銀行だ」と認識し、さらにやる気を出す効果がある。
年功序列の色彩が濃い銀行界の給与体系が批判され、成果主義を導入する銀行が増えた時期があったが
、成果主義は弊害が大きい。例えば融資の実行額を評価基準にすると、従業員は短期的な実績ばかりに
意識が向いて融資判断が甘くなり、後に回収が難しい不良債権の山になりかねない。 当行も2004年に
人事制度を改め、職務内容や能力に応じた給与体系にしたが、成果主義は極力、排除している。従業員
の能力をはかる場合には、複数の人間による評価を実行している。 人間がほかの人間を評価する際は
主観が入るのが当然だ。なるべく多くの人の評価を集め、客観性を確保すべきだ。人事部は1人の従業員の
評価を決める際に5、6人の評価を聞き取る。評価項目ごとに点数をつけ、総合点を出す。結果を見て「こんな
に低いのか」といった疑問が生じる場合は原因を探る。一つの仕事の結果が出るまでには3~5年はかかるの
が普通だ。だからこそ、人材の評価にも長期的な視野が必要だと考える。
日本経済新聞
2013年2月11日 4:44 PM | カテゴリー:社労士