女性の賃金最高

女性の賃金が増えている。厚生労働省が21日発表した賃金構造基本統計調査によると、2012年のフルタイムで

働く女性の平均賃金は前年比0・5%増の月額23万3100円と、2年連続で過去最高を更新した。男女間の賃金

格差も過去最小に縮まった。賃金の伸び率では女性が男性を上回っており、女性の活用がデフレ脱却をめざす

安倍晋三首相の経済政策、アベノミクスのカギを握りそうだ。 調査は、10人以上の常用労働者を雇う4万9230

事業所の12年6月の所定内給与が対象。残業代や休日出勤の手当などは含まない。 男女を合わせた平均賃金

は0・3%増の29万7700円と、3年連続で増加。06~09年は賃金が若年層より高い団塊世代の退職に加え、

08年秋のリーマン・ショック後の定期昇給の凍結などで4年続けて減っていた。 女性の賃金は1989年以降、

前年を下回ったのは2年だけで、毎年の伸び率は男性をおおむね上回る。12年も男性は0・2%増の32万9000円

にとどまった。女性の賃金水準は90年には男性の6割程度だったが、12年は7割を超えた。 女性の平均賃金を

業種別でみると、卸・小売業は3%増、生活関連サービス・娯楽業は1・6%増と、女性が比較的多い業種での伸び

が目立つ。日本総研の山田久チーフエコノミストは「円高の影響が小さかった内需型のサービス業で人手不足感

が強まり、接客などを得意とする女性の給料が上がった」と分析する。 働く女性の数そのものも増えている。12年

の女性の雇用者は前年より6万人多い2375万人と過去最高を更新した。 一方、男性の賃金がわずかながら増え

たのは、賃金が若者より多い年長者の労働者が増えたためだ。男性は労働者の数が減少する傾向にあり、賃金は

増えにくい状況が続いている。 賃金の増加は、2%の物価上昇率目標を掲げてデフレ脱却をめざす首相の経済

政策の焦点になる。賃金水準が上がらず物価だけが上昇すれば、家計の実質的な所得水準が下がるためだ。

首相は経済界に賃上げを直接要請したほか、女性と若者雇用に力を入れる考えを示している。女性の就労を増

やすには、保育所の整備など女性が働きやすい環境をつくる必要がある。日本では働く女性の6割が出産後に

退職する。20代後半から30代の女性が仕事から離れる割合は先進国で突出する。女性を労働市場につなぎ留め

られれば、国内総生産を1・5%押し上げるとの試算もある。 子育てと仕事の両立を支えるため、企業が社内などに

設ける「企業内保育所」は4千カ所以上に増えた。だが大半は認可外で国の助成金は受けられない。企業の間で

は「認可基準が厳しすぎる」との声が出ており、規制改革の争点の一つになっている。

日本経済新聞