派遣雇用規制緩和 同一業務3年まで廃止 労働者派遣制度

厚生労働省は労働者派遣の規制を大幅に見直す。業務ごとに設けている3年の期間上限を廃止。期間の上限は働く

個人ごとに設け、人が交代すれば、長期的に同じ業務に派遣労働者が就けるようにする。企業は幅広い業務で派遣を

活用でき、派遣労働者のキャリアアップにもつながる。派遣への規制を強めた民主党政権時代の方針を転換する。

厚労省の研究会が6日に、こうした意見を盛った報告書案を示す。8月末から改正案の詳細の検討を始め、2014年の

通常国会に労働者派遣法の改正案を提出する。 現行の制度では、通訳やアナウンサーなど「専門26業務」は派遣期間

に上限がない。それ以外は最長3年と上限が決まっている。上限は会社がある業務を派遣社員に任せてよい期間で、

ある業務で前任者が2年半働くと、後任者は半年しか働けず、安定した仕事ができない問題があった。 この上限を業務で

はなく1人の人が1カ所で働く期間の上限に切り替える方向だ。企業は働く人を交代させればその業務をずっと派遣に

任せることができ、労働者も一定期間同じ職場で働ける。ただ、派遣先の正社員の職域を侵さないという従来の原則が揺らぐ

可能性があり、正社員の労働組合は反発しそうだ。 期間に上限のない派遣労働者の範囲も見直す。現在の専門26業務

の中には「取引文書作成」など、今は必ずしも専門的ではなくなった業務も含まれる。業務による線引きを廃止し、代わりに

派遣元企業が常時雇用している労働者には期間の制限をなくす案も検討する。現在、派遣労働者の6割程度は常用雇用

であり、この案が実現すれば1つの職場で期間の制限なく働ける労働者が増える可能性がある。

▽…専門的な知識や技術を必要とする業務が増えたことを受け、労働力需給の調整システムのひとつとして1985年に整備

された。労働者には、勤務時間や仕事を自由に選べる利点がある。当初は専門的な業務のみに派遣を許可していたが、

99年の改正で原則自由化された。▽…ソフトウエア開発など専門26業務と呼ばれる業務は個人が期間の制限を受けずに、

派遣として働くことができる。実際には現在、28業務ある。それ以外の業務は派遣期間の上限が原則1年だが、労働組合の

意見を聞けば最長3年までは延長できる。▽…2008年秋のリーマン・ショック後には、大手製造業を中心にいわゆる「派遣切り」

が社会問題化した。これを受け、民主党政権は派遣制度への規制強化を検討。10年には、専門26業務に対する指導・監督を

強化した。雇用期間が30日以内の日雇い派遣を原則禁止する法改正も12年10月に施行した。派遣労働者は12年時点で

119万人で07年から42万人減った。

日本経済新聞