賃金を上げるには

賃金を上げるには(景気指標)

日本経済新聞 

 日銀は20~21日の金融政策決定会合終了後に、3年あまり続けてきた異次元の金融緩和の「総括的な検証」の結果を公表する。

 今回の検証に含まれるか否かは不明だが、消費者物価と同様、賃金が伸び悩んだことも日銀の誤算のひとつだろう。

 名目賃金から消費者物価上昇率を差し引いた実質賃金をみると、6月と7月はいずれも前年同月比で2%の上昇だ。上昇率は2010年半ば以来の大きさとなった。

 しかし、消費者物価はマイナス圏のため「物価が上がり、賃金がそれ以上に上がる」という理想的な状況にはほど遠い。

 底堅い企業収益を背景に賃金が安定的に上昇していけば、実際の物価も、予想物価上昇率も上がりやすくなる。海外からはそんな指摘が相次いでいる。

 「民間の賃金上昇の誘因策を」と安倍晋三首相らに説いたのは、ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏だった。8月には国際通貨基金(IMF)が「アベノミクスを再び軌道に乗せよ」と題した提言で議論に加わった。

 日本では、労働市場が賃金水準の高い正社員と低い非正規労働者に二極化し、全体の賃金上昇圧力が高まりにくい、とIMFは指摘している。

 働き方改革の柱として非正規労働者の待遇改善を主眼に置く「同一労働同一賃金」の推進は、物価押し上げという副次的効果をもたらすだろうか。

 IMFは高収益の企業を対象に3%の賃上げも求めている。3%とは2%の物価目標に1%の生産性上昇率を加味した数値。企業統治指針のやり方にならい、政府が企業に「従うか、従わないなら説明を」と迫る案だ。

 さらに、政府が物価安定目標に沿って、公務員の給与を率先して引き上げる案もある。ただ、民間の賃金実績を踏まえて公務員給与を決める今のやり方を変えなくてはならない。

 アイデアは他にもある。持続的な賃金と物価の好循環づくりに向け、政府・日銀はもっと突っ込んで協力策を協議してはどうか。

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