電通の違法残業に罰金50万円

電通、違法残業に罰金50万円、東京簡裁判決、甘い労務管理にリスク。

 電通の違法残業事件で、東京簡裁は6日、労働基準法違反罪に問われた法人としての同社に求刑通り罰金50万円の判決を言い渡した。菊地努裁判官は違法な長時間労働が常態化していたとして、「刑事責任は重い」と結論づけた。電通は控訴せず判決は確定する見通し。

 社員の過労自殺を機に社会的注目を集め、「働き方改革」の議論にも影響を与えた事件は終結する。裁判ではトップが法廷に出廷。社会的批判も浴び、労務管理の甘さが経営リスクにつながることが示された。今後は各企業の再発防止への取り組みが課題となる。

 電通の山本敏博社長は閉廷後に記者会見し「判決を厳粛に受け止めている」と謝罪した。
 判決は、新入社員だった高橋まつりさん(当時24)の過労自殺に触れ、「尊い命が奪われる結果が生じたことは看過できない」と指摘。長時間労働が常態化していたのに、「抜本的対策を講じず労働時間の削減を現場任せにしていた」と批判した。

 一方、午後10時以降の業務を原則禁止するなどの対策を評価。判決言い渡し後には「計画が達成されるか社会全体が注視している。日本を代表する企業として立場に相応した社会的役割を果たしてほしい」と説諭した。

 事件により電通は社長が2度にわたって出廷したほか、一部官公庁の入札参加資格を失うなどのペナルティーを受けた。業績への影響も出ている。一方で罰金額は大企業にとっては極めて少額で、抑止力を疑問視する声もある。

 日本労働弁護団事務局長の嶋崎量弁護士は「過労死を起こした企業とは国や自治体が一律に契約を結ばないなどの制度を創設すべきだ」と話す。今後、罰金の上限引き上げも議論になりそうだ。

 判決によると、電通本社の部長3人(当時)は2015年10~12月、高橋さんら社員4人に対し、1カ月の残業時間の上限を最大で約19時間超えて働かせたとされる。

働き方どう管理すれば…、違法残業で電通に罰金――まつりさん母、「国は監視強化を」。

 過労自殺した電通の新入社員、高橋まつりさん(当時24)の母、幸美さん(54)は6日の判決後に東京都内で記者会見し、「社員が過労死しなければ罰せられない」と悔しさをにじませつつ、「労働基準法違反は許されない犯罪。国をあげて監視を強化してもらいたい」と訴えた。

 まな娘の死が日本社会の働き方を見直す機会になったことについては「世の中が変わっていく中でまつりに生きてほしかった」と話した。

 判決は求刑通り、電通に対して罰金50万円を言い渡した。代理人の川人博弁護士は「刑事裁判で電通の責任が確定したのは重要な意義を持つ」と強調。その上で「これだけの大企業で罰金50万円は少ないというのが多くの人の受け止めだろう」と労基法の見直しの必要性に言及した。

働き方どう管理すれば…、違法残業で電通に罰金――電通・山本社長、「過重労働絶つ」。

 電通の違法残業事件で、同社の山本敏博社長は6日の判決後に記者会見し「労働改革の実行を通じ信頼される会社になる」と再発防止を誓った。

 この日の法廷には過労自殺した新入社員の高橋まつりさん(当時24)の母親が姿を見せ、山本社長は深々と一礼してから入廷した。

 裁判官からは再発防止策について「完全に履行されるか疑問を持っている人もいる」と指摘されたが、山本社長は会見で「過重労働を根絶することを、おわびとともに約束したい」と語った。

日本経済新聞