企業型保育所

企業型保育所、2万人分増設、厚労・財務省、待機児童対策で来年度、負担金上げへ調整。

 厚生労働省と財務省は2018年度に企業主導型の保育所を増やし、最大で2万人分の保育の受け皿をつくる。安倍晋三首相は20年度末までに32万人分の追加の受け皿確保を打ち出しており、働き方改革に取り組む企業側の協力もあおぎながら、待機児童の解消につなげていく。企業から集める拠出金を増やし、約300億円を追加の保育所整備に回す。

 安倍首相は衆院選にあわせ、看板政策の「人づくり革命」に2兆円規模を投じると表明した。待機児童は現在2万6千人。首相は将来の保育の需要を見込んで、32万人分の受け皿を整える時期を当初の22年度末から20年度末に前倒しした。

 厚労省と財務省は18年度に追加で10万人分の受け皿整備を目指す。
 整備に必要なお金に関しては、企業が負担する「事業主拠出金」をさらに引き上げるよう経済界と調整に入る。いまの負担率は従業員の賃金の0・23%だが、これを0・25%まで上げる。企業主導型保育所だけで1万5千~2万人分の保育の受け皿が整う見通しだ。

 企業型保育所は多様な働き方を促し、仕事と子育ての両立を目指すため、前向きに検討する事業者が増えてきた。両省は受け皿整備を急ピッチで進めるには、負担を含め企業側の協力が欠かせないと考えた。国や地方が直接出す金額が少なく済むという思いもある。

 企業型で確保できそうな2万人分以外の8万人分は、認可保育所などの整備で確保を目指す。これには約700億円の費用が必要で、財務省は高所得者に特例で支給する児童手当を廃止してお金を回したい考えだが、与党には慎重論が残る。

 また、19年度から20年度にかけて想定する20万人分の保育の受け皿確保には、2千億円ほどの費用がかかる。首相は対応として、企業や従業員から社会保険料に上乗せして財源を徴収する「こども保険」も選択肢の一つとして検討を続ける姿勢を示している。

 首相が2兆円規模を投じるとした「人づくり」に回すお金は、19年10月に予定する消費増税で増える税収で大半をまかなうが、3千億円程度足りない。保育所整備にどれだけお金が回るかも不明だ。この部分についても政府・与党内からは、今回の事業主拠出金を含めて「企業側の負担をさらに増やして対応すべきだ」との声も出ている。
 衆院選の選挙結果によって待機児童対策の方針が変わる可能性もある。

 ▼企業主導型保育所 企業が従業員の福利厚生の一環で主体となって保育所を設置する事業。保育士の配置など一定の基準を満たせば、企業は認可並みの補助金が受け取れる。事業主の厚生年金保険料に上乗せした拠出金が財源になる。2016年度までに約2万人の定員枠を確保した。企業負担が生じる一方、子育てを抱える従業員の就労を促す効果があり、企業にとってもメリットがある。

生保レディー働きやすく、住生、企業型保育に来年度参入、日生は100カ所開設。

 企業主導型保育所の整備に国内生命保険各社も動き始めた。生保は全国に23万人の「生保レディー」を抱える。女性職員にとって子育てとの両立がしやすい職場環境を整えるのが狙いだ。住友生命保険が2018年度から企業型の保育事業に参入、先行する日本生命保険も来春までに全国100カ所に開設する。第一生命保険も保有不動産に保育所誘致を進める。

 住友生命は全国6カ所に企業型保育所を開設し、東京や大阪、名古屋など待機児童が多い地域を中心に設ける。利用枠の半数は社員以外でも使えるようにする。
 生保では日本生命保険がニチイ学館と組み、いち早く参入。来春までに1800人程度の受け皿を用意する計画だ。開設と並行してあいおいニッセイ同和損保などと提携し、他社に利用枠を提供する取り組みも進める。中堅の富国生命保険も今年度から参入した。

 国内生保の多くは駅周辺など立地条件の良い場所で営業所を展開する。こうした自社物件への一般向けの保育所誘致も進めており、第一生命は都内を中心に996人分の受け入れ規模を整えた。将来的には2500人規模まで増やす。明治安田生命保険も保有物件に保育所を誘致する方針だ。

 生保の営業は現在も「生保レディー」と呼ばれる女性の営業職員が中心だ。一方で高齢化や人手不足の影響もあって、営業職員の確保が年々難しくなっている事情がある。営業所と同じ建物に保育所を設けることで、優秀な営業職員が子育てしながら働き続けられる環境整備にもつながると判断した。

日本経済新聞