認可保育所の無償化

3~5歳の認可保育所、所得制限なく無償化、政府方針。

 政府は21日、人づくり関連政策の柱である3~5歳の認可保育所の無償化について、所得に関係なく一律で実施する方針を固めた。一律無償化には「高所得者に恩恵が偏る」として、高所得者に一定の自己負担を求める声があった。しかし、安倍晋三首相が先の衆院選で「すべての3歳から5歳の幼稚園・保育園を全面無償化する」と訴えており、整合性がとれないと判断した。

 政府が12月上旬にまとめる教育無償化などを柱とした「人づくり革命」に関する政策パッケージに盛り込む。5歳は先行して2019年度に無償化し、20年度は3~4歳に対象を広げる。政府は3~5歳の保育園と幼稚園の無償化に8千億円を見込んでいたが、認可保育所の一律無償化で膨らむ可能性がある。

 認可保育所の保育料は一般的に認可外より割安だが、所得に比例して増える仕組みだ。実際の負担額は住んでいる自治体によって異なるが、高所得世帯の保育料は最大で月10万円程度になることがある。自民党はこうした世帯を含めて一律で無償化すれば恩恵が高所得者に偏ると見て、高い保育料を払う高所得者には一定の自己負担を求める提言案をまとめていた。政策を検討してきた内閣官房でも高所得者には保育料の補てん額に上限を設ける案を検討してきた。

 一方、首相官邸内では高所得者に限るとはいえ、認可保育所に通う3~5歳児の親の負担を残せば無償化とは言えず、首相が訴えた公約に反するとの懸念が出ていた。20日の衆院代表質問でも、立憲民主党の枝野幸男代表が幼児教育の無償化について「大切なのは全ての子どもが等しく対象であることだ。親の年収や施設の種類で限定や差異を付けるべきでない」と追及していた。

 0~2歳の認可保育所の保育料は、年収約260万円未満の住民税非課税の世帯に限って無償化する。

 認可保育所が満員で子どもを預けられず、やむをえず保育料の高い認可外保育所に預けている世帯も多い。認可外保育所向けの負担の軽減措置も別に検討している。

 政府は高等教育の無償化も進める。年収約260万円未満の住民税非課税世帯の学生の学費を免除し、返済する必要がない給付型奨学金を拡大する。アルバイトに時間を取られずに勉学に集中できる環境を整える。

 政府は消費税収と企業拠出金でまかなう財源2兆円の枠内で幼児教育や大学の無償化を進める。認可保育所を完全無償化して財源が増えた分、高等教育の無償化など他の施策にしわ寄せが来る可能性が高い。無償化政策の恩恵が負担能力がある高所得世帯に偏るのは明らかで、国の財政が厳しいなかで財源の使い道の妥当性への批判が出ることは必至だ。

 政府が12月上旬にまとめる政策パッケージには、公明党が公約に掲げた私立高校の無償化も盛り込む。公明は年収590万円未満の世帯を対象に実質無償化を求めており、財源をどのように手当てするかを含めて調整が続いている。

【表】認可保育所の保育料は所得に応じて高くなる   
〓〓 国が定める上限額、3歳以上 〓〓 
年 収 保育料(月) 
生活保護世帯 0円 
~ 260万円 6000円 
~ 330万円 1万6500円 
~ 470万円 2万7000円 
~ 640万円 4万1500円 
~ 930万円 5万8000円 
~1130万円 7万7000円 
1130万円~ 10万1000円 
(注)実際の利用者負担額は自治体によって異なる 

日本経済新聞